遺言書を自筆するメリット・デメリット、注意すべきルールを分かりやすく解説!
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京都にて多くの相続案件に取り組む中で、生前のうちから準備をしていなかったために泥沼のような相続になったお客様を見てきました。そこで、皆さんの考えるきっかけになればと思い、コラムを執筆しております。
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「遺言書を書いたほうがいいと聞いたけど、書く必要はそもそもあるのかな・・」
「もし遺言書を自分で書くとしたら、書く時のルールはあるのかな?」
遺言書を書こうと思っている人の中には、自分で書くべきなのかどうか不安な人も多いのではないでしょうか。
遺言書は自分で書くこともできますが、多くのメリット・デメリットがあります!
本記事では、遺言書の書く時の大事なルール、自分で書くメリット・デメリットを紹介します。
この記事を読めば、自分で書くべきかどうかという悩みともサヨナラすることができますよ!
なお、以下の記事で遺言書の種類や主な書く手順などをまとめているので、あわせてご覧ください。
1.自筆証書遺言を書くときの3つのルール
遺言書にはさまざまな種類がありますが、自筆する場合は自筆証書遺言が該当するので、今回は自筆証書遺言を書くときのルールを紹介します。
自筆証書遺言とは、遺言書の本文や氏名、日付など全ての項目を自分で書いて作成する遺言書のことです。
自筆証書遺言を書くときの主なルールは3つあります。
順に紹介するので、必ず頭に入れておきましょう!
なお、遺言書の書き方については、以下の記事での詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
(1)全文自筆する
自筆証書遺言の絶対的なルールとして、遺言者が財産目録を除くすべての文章を自筆しなければなりません。
また、この財産目録は遺言者以外の人が作成したものでも問題なく、預貯金通帳のコピーを財産目録として添付することも可能になりました。
ただし、財産目録の全ページに遺言者が署名押印しなければならないことには、注意が必要です。
(引用元:法務省│自筆証書遺言に関するルールが変わります。)
そのため、財産目録以外のものについては全ての文章を手書きで記入する必要があり、遺言者以外の記入やパソコンでの作成は無効の対象となります。
(2)日付を記載する
遺言書を作成した日付を記載するのがルールです。
手紙や資料などでは「〇年×月吉日」と記載する場合がありますが、これでは正確な作成日を特定できないので無効の条件に該当します。
「〇年×月△日」のように、はっきり日にちまで特定できるようにすることが重要です。
中には、「満90歳の誕生日」のように日にちまで特定できる記入方法もありますが、分かりづらいのでシンプルに「〇年×月△日」と記入することをおすすめします。
なお、日付のスタンプは不可なので、日付も手書きで記してください。
もし、遺言書が何通もある場合は、後の日付が記載された遺言書が優先されるので、書き直した場合は書き直した日付を記入しましょう!
(3)署名・押印をする
遺言内容を書き終えた後に、必ず署名と押印を忘れないようにしましょう。
せっかく不備なく遺言内容を記していても、署名や押印がなければ無効になります。
署名をする場合は本人と分かればよいので、芸名やペンネームがあれば署名に使っても問題ありません。
ただし、一般人の場合は、相続人が分かりやすいように本名をフルネームで記入することをおすすめします。
また、押印は認印や拇印でも遺言書として認められますが、トラブル防止のため実印で行うのが無難です。
なお、遺言書が複数枚になるときは契印を、訂正する場合は訂正箇所と訂正説明部の署名の横に捺印をしましょう!
どちらの場合も、押印で使った印鑑でかまいません。
2.自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言を作成するメリットとデメリットを紹介します。
メリットは自筆証書遺言を作成するモチベーションを上げるために重要ですが、デメリットを把握しておくことでどのようなリスクがあるのか想定することが可能です。
公正証書遺言や秘密証書遺言など他にも選択肢があるので、メリットとデメリットを頭に入れた上で自筆証書遺言を作成するか決めましょう!
それでは、順に説明します。
(1)自筆証書遺言の4つのメリット
自筆証書遺言のメリットを紹介します。
主なメリットは主に以下の4つです。
- 法務局に遺言書の保管・検認をしてもらうことができる
- 制作コストを抑えられる
- 遺言内容を他人に知られるリスクが低い
- いつでも書き直しができる
順に説明するので、作業のモチベーションにつなげましょう!
#1.法務局に遺言書の保管・検認をしてもらうことができる
自筆証書作成での大きな問題である遺言書の保管・検認を法務局に依頼することができます。
この制度により、遺言書の紛失や隠匿等を未然に防ぎ、遺言書の存在の把握が簡単になりました。
法務省│法務局における自筆証書遺言書保管制度について
今まで自筆証書遺言は、自宅保管が多く、遺言書が破棄されてしまっていたりするリスクがありました。
また、こうして保管された自筆証書遺言が見つかっても、「検認」という遺言書が確かにあるということを裁判所に確認してもらう手続きが必要です。
そのため、こうしたリスクや相続後の手間を省くことが可能になったため、自筆証書作成が容易になりました。
ただし、この制度を活用したとしても、法務局にて遺言書の書き方・内容が適正かどうかは確認されませんので、注意ください。
詳しい書き方については、こちらの記事に記載しています。
#2.制作コストを抑えられる
自筆証書遺言の大きなメリットが制作コストを抑えられることです。
公正証書遺言や秘密証書遺言を作成すると、無効の防止や遺言書の存在の認知をすることはできますが費用が発生します。
公正証書遺言の場合は最も安くて5,000円、相続財産の額によっては5万円を超えることもあり、秘密証書遺言は公正人に遺言書の存在を確認してもらうだけで11,000円もかかるのです。
一方、自筆証書遺言は全ての作業を自分で行い第三者が関わらないので、ペンと用紙を用意するだけで費用は一切かかりません。
いくら書き直したところで追加費用はかからないので、制作コストを抑えたい人は自筆証書遺言を作成しましょう!
#3.遺言内容を他人に知られるリスクが低い
自筆証書遺言は、基本的に書き終わったらすぐに封筒に入れて封をするため、遺言内容を他人に知られないようにすることができます。
もし、遺言内容が相続人に知れ渡り相続内容に不満を抱く人が現れれば、混乱やトラブルを招く恐れがあるでしょう。
中には改ざんを目論む相続人が出現する可能性もあるので、遺言内容を相続人に知られないようにすることは重要といえます。
自筆証書遺言を書き終えた後は、必ず紛失しないように厳重に保管しておきましょう!
#4.いつでも書き直しができる
書き終えた遺言書を自分で保管するので、いつでも好きなタイミングで書き直しができます。
公正証書遺言の場合は公証人役場に保管されるので、いつでも書き直しができるわけではありません。
遺言書を書き終えた後に、相続財産や相続人が変動する可能性もあるので、中には書き直しが必要なケースが出てきます。
時間に余裕がない人ほど、好きなときに書き直しができるメリットは大きいでしょう。
(2)自筆証書遺言の3つのデメリット
自筆証書遺言のデメリットを紹介します。
主なデメリットは以下の3つです。
- 無効になる可能性がある
- 相続人の手に渡らない場合がある
- 相続人に手続きの負担がかかる
順に説明するので、自筆証書遺言で考えられるリスクを頭に入れておきましょう!
#1.無効になる可能性がある
自筆証書遺言は、1つでも不備があれば無効になります。
たとえば、作成日が不明確であったり押印がされていなかったりすると無効です。
他にも、遺言内容が不明瞭で相続人が混乱する場合も無効の条件に当てはまります。
- 代筆やパソコンでの記入がある(財産目録を除く)
- 日付・署名の記載がない
- 相続内容が不明瞭になっている
- 2人以上が共同で書いている
遺言書は厳正なチェックをクリアしたものでなければ効力を発揮しないので、無効にならないようにしっかり書き方や遺言内容を見直しする必要があります。
遺言書の正式なフォーマットはないので、基本的に記入方法は自由ですが、上記で紹介した3つのルールは確実に押さえておきましょう!
#2.相続人の手に渡らない場合がある
自筆証書遺言は自分で管理するので、管理方法によっては死後相続人の手に渡らない可能性があります。
たとえば、相続人が想定できないような場所に保管してあり、遺言者が誰にも保管場所を伝えていなければ、遺言書の存在自体も知られることはないでしょう。
そのため、相続人が簡単に見つけられるように、部屋の分かりやすい部分に保管するか、相続人に保管場所を伝えておくのが効果的です。
改ざんや隠ぺいの恐れを考慮すると、最も信頼のおける人だけに情報を提供しておきましょう!
#3.相続人に手続きの負担がかかる
遺言書が法律上有効か確認してもらう必要があるので、相続人に手続きの負担がかかります。
相続人は家庭裁判所に自筆証書遺言を提出し、遺言書が正式な方法で書かれたものなのか、改ざんされていないかなど確認してもらわなければなりません。
相続人に少しでも早く財産を相続させるために、遺言執行者を決めておくことをおすすめします。
遺言執行者とは遺言の内容に沿って相続人を代表して手続きを行う人のことで、遺言執行者を指定しておくことで、スムーズに手続きを進めることが可能です。
遺言書を作成するだけでなく、遺言書が相続人の手に渡った後のことも配慮してあげましょう!
3.自筆証書遺言の4つのコツ
自筆証書遺言が無効にならないようにするコツを紹介します。
特に意識しておくべきポイントは以下の4つです。
順に紹介するので、自筆証書遺言を書くときに注意しましょう!
なお、遺言書が無効になるケースを以下の記事にまとめているので、あわせてご覧ください。
(1)専門家に内容を確認してもらう
自筆証書遺言を確実に有効にするためには、専門家に無効にならないか確認してもらうのが効果的です。
一般的に、無効になるケースは決まっていますが、思わぬ部分が規則に引っかかり無効判定される可能性もあります。
法律のことは法律の専門家に聞くのがベストなので、専門家に連絡して、自筆証書遺言が有効か判定してもらいましょう。
専門家から問題ないと認められれば安心して遺言書を相続人に託すことができるので、少しでも不安がある人は専門家に確認することをおすすめします。
なお、第三者に情報が漏れることを危惧している人もいるかもしれませんが、業務上の情報のやり取りを第三者に流すことは禁止されているので安心して相談してみてください!
(2)相続人に渡るように保管する
確実に相続人の手に遺言書が渡るように、保管場所を選びましょう。
保管場所といえば、金庫やタンス、仏壇などさまざまな箇所を思い浮かべるかもしれませんが、身近な場所に保管しておくと、相続人に中身を見られる可能性があります。
そこで、貸金庫を利用して権利証や有価証券などと一緒に保管しておくのが無難です。
遺言書が貸金庫に保管してあることだけを相続人に伝えておくだけで、死後遺言書が確実に相続人の手に渡ります。
生きている限り相続人などが干渉できないので、自筆証書遺言をの保管する場合は安全度の高い貸金庫を利用しましょう!
(3)曖昧な表現は避ける
遺言内容が不明瞭であれば無効になるので、曖昧な表現を避けるようにしましょう。
特に相続財産の分配が不明瞭であれば、相続人の間でトラブルが発生する可能性が高いです。
土地や不動産の分け方で揉めるケースも多いので、相続人同士で話合って決めるような内容にするのはおすすめしません。
全ての相続人が納得するような遺言内容にするのは難しいかもしれませんが、遺留分などの法律によって相続人には最低限の財産が相続される仕組みになっているので、遺言者は誰が見ても分かりやすい相続内容を記述しましょう。
(4)遺留分を配慮して相続財産を分配する
相続財産を決めるときは、遺留分を配慮しましょう。
老後の面倒を見てくれたなどを理由に、特定の相続人に相続する財産を増やしたいと思うのは当然です。
しかし、全ての相続人に財産を受け取る権利があるので、相続人の間でトラブルや争いを防ぐために、遺留分に沿った遺言内容にする必要があります。
特定の相続人だけが多く財産を受け取れるような遺言書にすると、他の相続人を差し置いて自分だけがいい思いをしていると冷めた目で見られる可能性があるので、今後の家族間の関係が悪化する可能性があることも頭に入れておきましょう。
もし、特定の相続人が他の相続人より多く財産を受け取るようにする場合は、誰もが納得する理由を添えることをおすすめします。
まとめ
遺言書を自筆することで、制作コストを抑えたり情報漏洩を防げたりできます。
ただし、少しの不備で無効になる場合があるので、少なくとも今回紹介した3つのルールは確実に守ることが重要です。
もし、無効が不安であれば、まずは、【行政書士 小巻秀夫事務所】までご相談ください!